第1話 煉獄

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アルフォンスは幸紀から2、3歩離れて後ろに手を組んで立った。 それでも疑わしそうにアルフォンスを見ていた幸紀だったが、アルフォンスが動かない事を確認し、ゆっくりと窓を開けた。 開ける前と同じ景色が広がっている。 窓に小細工は一切なかった。 どうやら信じるしかなさそうである。 窓を閉めて、アルフォンスに向き直った。 未だに部屋は暗いまま。 スポットライトに照らされたまま、アルフォンスは待っていた。そして幸紀にも、スポットライトは当たったままである。 「…ここが私の知らない世界なのはわかりました。ですが、貴方の事はまだ信用出来ません。それに私はどうしてここにいるんですか?貴方が…連れてきたんですか?」 幸紀の言う事も最もであった。 見ず知らずの人間にと一緒で、しかも知らない世界に来てしまったのだから。 少々警戒しすぎだが、仕方ないと言える。 幸紀の目は疑いだけでなく、覚悟の色も滲ませていた。それはある事を聞かされる事に対してのもの。 自分がもう、死んでしまった事実を受け入れようという強い意志の籠った目だ。 アルフォンスはそれを察し、早めに答えを言ってやった。 「単刀直入に申し上げましょう、白崎様。貴方がここにいる理由はつまり… 貴方が死にかけているからです。」 「…死にかけている?死んだの間違いでは?」 幸紀は予想と若干違った答えに戸惑いを見せる。 「いいえ。貴方はまだ生きています。先程お話したように、意識不明の重体です。今も貴方の体は、元の世界で生命活動中ですよ。まぁ、いつ死んでもおかしくはない状態ですがね…。覚えていますか?貴方が石階段から落ちた事を。」 「勿論…、あれは私の自殺ですから。」 幸紀は冷然といった感じで言った。 自分が自殺した事に対して、何とも思っていないようである。むしろそれがどうしたとでも言いたげな姿に、アルフォンスは沈痛な面持ちで話しかける。 「はぁ…白崎様。」 「何ですか。」 「…きっと、お辛かったでしょう。」 「わかったような口をきかないでください。」 幸紀という少女はどこまでも冷たかった。
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