プロローグ

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2050年12月25日 「せーのっ!!」 『メリークリスマス!!』 シャインの音頭に続いて十三人分の唱和が響き、高らかにグラスが打ち鳴らされる。 それを皮切りに、「待ってました」とばかりに肉に飢えた男達が皿を片手にテーブルの上に所狭しと並べられた料理に群がり、女性陣は各々好きな甘味を手に野郎共が繰り広げる仁義なき戦いを呆れたような目で眺めていた。 今日は冬の一大年中行事、クリスマス。浮かれる世の例に漏れず、この仮想世界、アナザーワールドもクリスマスムード一色に染まっていた。 「うんめぇ! なんだこの肉! こんなの食った事ねえ!」 「あってめっ! グレイヴ! そりゃ俺が目付けてた肉だぞ!」 「ちょっ……二人とも喧嘩しないでくださいよ!」 「騒がしい……」 現在は、いつものパーティーメンバー六人にレイン達のパーティー七人を加えた十三人の大所帯でのクリスマスパーティーの真っ只中。 まあ大所帯といっても、無敵の盾は今日は二百人規模の立食パーティーを開くと言っていたので、それとは流石に比べ物にならないが、それでも普段の倍以上の人間が揃っているので、普段の俺達から見るとやはり大所帯と言っても差し支えないだろう。 「……今日はありがとな、招待してくれて」 「俺は何もしてないけどな。礼ならルナに言った方がいいぞ。料理はほとんどルナとマリアさんが作ってくれたやつだし、そもそも企画したのはリリアさんだしな」 一通りグレイヴと喧嘩ーーと言う名の漫才ーーを繰り広げたレインが、もぐもぐと勝ち取った一番分厚いローストビーフを味わいながらそう礼を言ってくる。 しかし、今回のパーティーに関して俺は食材集めとレインへの声掛けくらいしか仕事をしていないので、大部分は女性陣の頑張りの賜物だ。 それを差し置いて礼を言われるのもなんなので、労いの言葉は功労者達に言うように促すと、レインは「わかったよ」と頷き、彼のパーティーメンバー達と交流を深める女性陣の方へと向かう。
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