悪たる樹霊

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「ル、ルナ? ちょっと落ち着い……」 神木に押し付けられるようにマウントポジションを取られ、完全に逃げ場を封殺されてしまうと制止の言葉を言い切るより早くルナがすりすりと胸に頭を擦り付けてくる。 現在、俺達は戦闘用の装備ではなく街中用の装備。普段そこにあり、頼もしく身を守ってくれるブレストプレートはそこにはなく、ルナの頭が動くたびにくすぐったさに襲われる。 さらに金属装備が無いのは当然ルナも同じで、ぴったりと密着されると背中に感じる硬質な感触とは対照的な柔らかい彼女の身体をダイレクトに感じてしまう。 「んっ……んふぅ……はぁ……」 「ひぅっ!?」 頬擦りを終えると、ルナは俺の体をよじ登るようにして今度は首元に顔を突っ込む。 そして次の瞬間、首筋に強烈な電気が走ったような感覚に襲われ、思わず全身を跳ねさせた。 「ちょ、ちょっとルナ……?」 「ちゅっ……んちゅ……」 気がつくと、ルナは俺の右の首筋に唇を付けていた。 いつのまにか両手首を握られ神木に押さえつけられ、意地でも逃がさないと言わんばかりの体勢のまま、まるで印を付けるかのように吸い付きながら、ルナの唇の感触は徐々に上に上にと上ってくる。 そしてついに首筋を上りきると、ルナは一度ちゅっと頬にキスを落としてからほんの僅かに身を離し、三度俺の唇に吸い付いた。 「んぅ……ふっ……ライト君……ライト君……」 そこにいることを確かめるかのように俺の名前を呼びながら、ルナは貪るように唇を合わせる。 俺の両腕を押さえつけていた手も外し、首に手を回してぴたりと全身を密着させながらルナは長いキスを堪能する。 普段よりも数段情熱的な恋人に戸惑いつつも、彼女の動きに合わせるようにキスに応えていると、不意に唇にルナの唇以外の感触を感じ、思わず目を見開いた。 「はぁ……んっ、ちゅっ……」 くちゅっ、くちっと僅かな水音を立てながら、時にノックをするように、時にはつつ……となぞるように、ルナの舌先が蠢く。 ーーえ、ちょ……これって……ーー ディープキス!? と思う間も無く、俺の唇が緩んだ刹那の瞬間を見逃さなかったルナの舌が俺の唇を強引に割り開いてするりと侵入してくる。
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