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「……ふむ、こんなところでしょうか」
時間にして二分ほどだろうか、ずっとそのままの体勢で動きを止めていたファーグスが一言呟いて、水に沈めていた右腕を引き揚げる。
すると、そこにはおそらく先ほど指先から伸ばしていたものであろう蔓の端が握られていて、既にそれは彼女の手から分離させられていた。
「ライトさん、こちら引き揚げていただけますか?」
「あ、ああ」
言われるがまま、ざぶざぶと泉の中に進み入りファーグスの隣に並ぶと、差し出された蔓の端を受け取り引っ張っていく。
「そういえば魚竜もいるんだよなぁ、嫌だなぁ、怖いなぁ」と内心ビクビクしながらも恐怖心を誤魔化しつつ蔓を綱引きのように引いていくと、最初はすいすいと引けていたのに、ある地点から少しずつ抵抗がかかるようになる。
「見えてきましたわね」
もっとも、抵抗があるとはいえどステータスがステータスなので引っ張らないということはない。
引くほどに重さを増していく蔓をぐいぐいと力技で弾き続けていると、やがて水面に球形の影が映る。
残りの蔓を一気に巻き取り、ざぱっと音を立てて水面から蔓の先に繋げられていた球を引き揚げると、それは緑色の蔓が幾重にも連なり編みこまれるようにして形作られた籠が姿を現した。
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