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「わぷっ!?」
蔓の付け根を掴み、籠を水面から引き揚げると中に押し込められた無数の魚が一斉にびちびちと暴れ回り、籠の網目から飛んできた水の飛沫が俺の顔を盛大に濡らす。
網目から覗き見れる限りでは、直径にしておよそ七十センチほどの大きさの籠には現実世界では南国でしか見られないようなビビッドなカラーリングの魚や、毒々しい色の魚も見受けられるが、これら全てが食べられるのだろうか。
今この場で食べるならばともかく、結局食べるのはシステムに保護された街の中なので例え毒があったとしてもなんら影響はないだろうが、これらの魚が活け造りで食卓に並んだとしたら少し食べるのに躊躇してしまいそうだ。
「まあ、釣果は上々といったところでしょうか?」
「うん、これだけあれば十分だよ。ありがとう」
釣ってはいないのでこれを釣果と呼ぶのかは疑問なれど、わざわざ突っ込む無粋はしまい。
ファーグスに礼を言いながら籠を携えて島に戻り、水際から十分距離を取ってからストレージからナイフを一本取り出し、中身を傷つけないよう慎重に蔓だけを切っていく。
中から取り出した魚をストレージに放り込みつつ数えていくと、合計で18匹の魚が入っていた。
他の料理もあることだし、これだけあれば万一にも足りないということはあるまい。
むしろ多すぎる事すらあり得るので、そうなった場合はマリアさんかウオシンさんにでも買い取って貰えばいいだろう。
「さて、では私はこの辺りで失礼致しますわね。後は逢瀬の続きをするなり森の子供達と腕を磨くなりなんなりと……ああ、でもそうですわね。初めはやはり、寝台の上が無難でよろしいかと」
「いきなり何の話!?」
「身を焦がす情動に身を任せるのも構いませんが、初めが野外というのはやはり少々趣に欠けますし……」
「いや、ちょ、おい!」
言うだけ言って、ファーグスはさっさと神木の方へと歩いていき、その幹に溶け入るように消えていく。
最後の最後に俺達をいじり倒して帰っていった樹霊の満足げな顔は、どうにも当分忘れられそうにもなさそうだ。
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