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思えば、彼らの装備は俺が前線組に加入する契機となったフェンリル戦からずっと変わっていなかったように思う。
あれからいくつもの戦いを乗り越えて、こなしてきたクエストなども十や二十では利かないだろう。
このヘルメスに来てからも大量のクエストをこなしているし、当然彼らもあの頃よりもレベルは上がっているだろう。
その都度武器や防具を強化してきたのだろうが、強化で誤魔化すのにも限界というものはある。
俺も以前の装備を使っていた時、意図的にステータスポイントを振らなかったりなどの小細工を弄して限界まで使い続けようとしてマリアさんに怒られたものだ。
「そういえば前使ってた装備はどうしたんだ?」
「ああ、それは無敵の盾の傘下ギルド含めたグループ内オークションに出した。落札した連中が使うだろ」
聞けば、無敵の盾では定期的にメンバーの使い古しの装備をギルド内と傘下ギルドの中で運営する競売にかけて下賜しているらしい。
使い古しとはいえ、最前線で戦っていたメンバーの装備ともなれば優先度が高いレアものや高ステータスを持つものばかりになる。
それを例えば最前線に出るには一歩及ばないプレイヤーが落札し、入手すれば大幅な戦力アップが見込める。
ある程度下地が出来ていることが前提にはなるが、うまくすれば一気に前線組に押し上げることすら可能だろう。
なるほど、使わなくなった装備一つも無駄にせず後進育成に活かすシステムは無敵の盾らしい。
「なるほど、そうやって処理するのもありなのか」
「まあ、一例に過ぎないけどな。その点で言ったら、お前達の旧装備は扱いが難しそうだが……」
確かに、ウチのパーティーメンバーの装備は一人一人の戦闘スタイルに合わせて一から誂えているものがほとんどの為性能面で尖っている部分が多いし、なによりメンバーの殆どが女性だ。
圧倒的に男女比が偏っているこの世界で、彼女達の装備を活かせるほど高レベルの女性プレイヤーというのは聞いたことがないし、仮にいたとしても性能的に使いこなすのは難しいだろう。まず需要がないのだ。
いやまあ、女性陣のものに限っては装備としての用途以外なら需要は少なからずあるのかもしれないが……少なくとも今は旧装備はストレージの肥やしである。
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