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しばらくぶりとなるヘルメス城(仮称)へと足を踏み入れると、床の転移陣が抜け落ちた以外は以前と全く変わらず絢爛豪華なエントランスが俺達を静かに出迎えた。
ひと気の全くないエントランスにはプレイヤーの軍靴の音が雑多に響き、最後の一人が城門をくぐると、開くときと同じような重低音を響かせ、分厚い鉄扉がひとりでに閉まり始める。
前回のヘスティアー戦と同じく、勿体つけるようにゆっくりと閉まっていく門扉はここから先に逃げ場はないという最後通牒なのだろうか?
しかしその扉をくぐるものは今回も一人としておらず、全員が戦いの場となるであろう城の奥を睨みつけていた。
「城の造り自体は概ね一緒だ。ヘルメスもこっちに出てくるつもりはないようだし、このまま突入する。覚悟はいいか?」
城に立ち入ってからしばし辺りを見渡して待ってみるが、一向にヘルメスやその取り巻きが姿を現さないのを確認すると、アルマダは一度背後の俺達に尋ね、プレイヤー達は鬨の声をその返事へと代える。
せっかちなお姉さんは事あるごとに俺達の前に姿を現しては急かしてきたものだが、どうやらヘルメスはボスらしく奥で待ち構えているつもりらしい。
そんな当たり前のことになんとなく新鮮さを感じるあたり、あの奔放女神に毒されてきている気がしないでもない。
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