万能の神

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「へぇ……タラスクですか、中々いい素材を使ってますね。よく手に馴染む……」 感慨深げに手の中に収まったリラの弦を何本か爪引き、音を奏でるヘルメス。 慌ててストレージを確認すると、そこにしまっておいたはずのリラが忽然と姿を消しており、ヘルメスの手にあるそれが複製でもなんでもなく、俺達が修復したリラそのものであることを理解する。 なるほど、流石は盗みの権能を持つ神。なんでも自由自在とまではいかないだろうが、ストレージからアイテムを抜き出す程度訳ないといったところか。 一通りリラの調子を確かめると、ヘルメスは空いた右手を身体の前に翳す。 するとその先に風が収束し、その中から彼の身の丈程の長杖と一本の曲刀が姿を現し、それぞれひとりでに動き出すと杖は彼の背中に、剣は左の腰へと収まった。 「おいおい、随分と盛りだくさんだな」 「器用貧乏な神性なもので。さて、僕の準備は整いました。そちらが良ければ、そちらのタイミングで始めてくださって結構ですよ」 ヘルメスのその言葉と共に、同じ顔をしている七人の少女達がそれぞれ装備している武器を取る。 盾持ちの片手直剣が一人、ダガーが一人、戦斧使いとタワーシールド装備の長槍使いに、魔術系の構成であろう、長杖(スタッフ)を装備した少女が一人ずつ。 変わり種として棘のついた鉄球が鎖で柄に繋がれた、モーニングスターと呼ばれる武器を持つ少女と洋弓を構える少女が一人ずつ。 メインのタンクが二人、タンクもできるアタッカーが一人と遠距離攻撃、後方支援が三人と純アタッカーが二人。 実にバランスのいい、理想的な構成のパーティーだ。 ここにヘルメスが加われば八人のフルパーティーが完成するわけで、今回の戦いは一つのパーティーを相手取った戦いになるようだ。
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