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「目くらましだ! 一回下がれ!」
迎撃のためというよりも俺達の五感を潰すための二つの魔法に、第一陣の中にいたトゥラケスが周囲の爆風に飲まれたプレイヤー達に指示を出す。
見た目の派手さの割にさほど威力はなかったのか、後退してきたプレイヤー達のHPはさほど減っておらず、回復も必須ではないレベルでしかない。ホワイトアウトは直接的な攻撃能力はないので当然だが、エクスプロージョンも目くらましに特化させているらしい。
「チッ……やられたか……」
爆煙が晴れ、陣形を組んだニンフの少女たちが姿を現わすと、彼女達の身体が薄く発光していた。
八人全員にバフがかけられており、今の目くらましはこのための時間稼ぎだったらしい。
特に指示を受けていた様子は無かったが、即興で今の連携はおよそ人工知能が取れるものではない。
人工知能が相手というよりも、熟練のパーティーを相手にするようなものと考えて臨むべきなのかもしれない。
「では、僕も何もしないでは示しがつきませんからやる事はやらせてもらいますね」
陣形を突破し、最後尾に配置された魔法使い二人をどうやって倒そうかトゥラケス達が攻めあぐねている中、ヘルメスは場違いに呑気な声音で呟くとリラを構える。
指を滑らせ、リラの弦を爪弾くとそれはなめらかに繋がり、どこか聞き覚えのあるメロディへと変わる。
「うそ」
メロディを聞いた瞬間、まずはシャインが呆然と声を上げる。
だがそれもそうだろう、ヘルメスが演奏を始めたのは紛れもなく彼女の持つユニークスキル≪歌姫≫のスキルの中に存在する一曲だったのだから。
「……ッ! 白魔法が使えるものはデバフを用意してくれ! 武器持ちに範囲を絞っても構わないから徹底してステータス管理!」
「了解!」
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