プロローグ

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「あら?」 「あれ? 今日来客の予定なんてありましたっけ?」 その後暫し、パーティーの垣根を越えた歓談に興じていると不意に玄関のドアがコンコンコン、と三度乾いた音を立てた。 「ちょっと見てきます」 マリアさんの店ならばともかく、このリリアさんのプレイヤーホームでは来客というものはそうそうーーというか全くない。 そもそもこの家自体、マザータウンの中でもかなり奥まった位置にあり、誰が住んでるか、そもそも誰かが所有しているということを知っている人間のほうが少数だ。 迷い込むにしても特にこの辺りには目的地に成り得そうな場所などなかった筈だが……と首を傾げながらもドアの方へ向かい、小さなドアスコープを覗き込む。 ーーなーんかデジャヴなんだよなぁーーなどと思いながら、覗き込んだことでシステムにより拡張されたドア越しの視界を見た瞬間、俺はそっとドアから離れた。 「……誰だったの?」 「いや、サンタの押し売りだった」 心なしか警戒している様子のルナがドアの向こうにいた人物の誰何を問うてきたので、答える。 要領の得ない俺の説明を訝しみつつ、次にリリアさんがスコープを覗き込むと、「なるほど」と頷いてからドアを開けた。 「ハーハッハッハァ! メリークリスマス諸君!! いい子は居ねえがぁぁぁぁ!!」 ドアが開くや否や、謎の高笑いといくつかの文化が混ざったようなセリフと共に入室してきたのは、雪のような立派な白いヒゲをたくわえ、血に濡れたような赤の上下の服と同色の三角帽子を被った大柄な男。 アナザーワールドの中でも屈指のギルドの一つに数えられる軍隊系ギルド≪無敵の盾≫副長のディエゴが、サンタ衣装に身を包んで仁王立ちをキメていた。
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