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きんと冷えた空気のなかに、白いものが混じりはじめた。
「あらサトル君」
下宿近くの公園。
どこで見ているのか、小さな彼女は、いつものように入口で出くわした。
「こんにちはエミリー」
見下ろす顔が緩むのは仕方ない。バイト上がりに会う彼女は、殊更良く見える。
「早いのね」
「うん。やっぱり忙しいのはイブだけみたいだよ」
二人の身長差は倍ほどあるが、金髪少女とくたびれた大学生は、並んで歩く。
「それ、なあに?」
「内緒で貰った。クッキーだって」
ケーキ屋の小さな紙袋を渡すが、甘い物好きの彼女には珍しく、黙って受け取った。
ベンチは雪という先客が居る。
何となく、木のそばで立ち止まった。
「どうしたの?」
「わたしも、あげるわ」
持っていた包みを、押し付けられた。
「おうちの皆と食べてね」
彼女のお菓子は下宿先でも好評だ。喜んで受け取ったが、彼女はじいっと見上げている。
「サトル君」
今日は髪を編んで、額が出ている。顔も半分マフラーに埋もれて可愛いなぁと、うっかり見とれる。
「どうして、きのうは来なかったの?」
ぎくりと固まった。
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