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宇宙ステーションが爆発する。ふっとばされる宇宙飛行士。
屋外階段の踊り場で目を覚ます男、ふらりと立ち上がり、東京タワーを見る。
東京タワーが横から見える。かなりの高所だ。
「ここは?」
男は辺りを見回す。大型の室外機や、アンテナがある。
寝ていた場所は、屋上設備点検用の階段だったらしい。
「どうして、こんなところに、俺は、俺は誰だ?」
思わず、手が顎をなで、感触で気付く、手袋をしている。
男は全身を精査し、自分が宇宙飛行士の格好をしていると知る。
「宇宙飛行士? コスプレか?」
男は記憶を失っていたが、自分がそんな立派な職業についたとは信じられない。
昨日の事も思い出せない。かわりに、宇宙ステーションが爆発する悪夢がよぎる。
「おーい」と叫ぶが返事はない。
ともかく誰かのいる場所に行こう。
下へ進むことにする。
階段を下り、ヘルメットを見つける。
近寄ると、銃声、ヘルメットが弾き飛ぶ。
男が驚き振り向くと、少女に拳銃を向けられていた。
男は駆け出し、少女は無言で撃つ。
バンバンバンと連射、銃弾が男をかすめる。
大型室外機の合間をジグザグに進む。
男の後を追う少女、銃声もたえない。
男は行き止まりに追い詰められる。
銃声、振り向きながら倒れ、尻餅をつく男。
「ま、待ってくれ、撃つな、なんで」
「あなたは、宇宙から落ちてきた」
「そんなバカな、生きていられるわけがない。燃えるか、潰れるかするだろ。息だってできないはずだ」
「そう、それでも生きている、あなたのような存在を殺すのが、私の仕事」
「なにかの間違いだ」
「自分の体を見てみなさい」
男は自分の体を改めて見る。
穴だらけ、血みどろだった。
「そんなに撃たれて、喋れるなんて、少なくとも人間じゃない」
「まて、うつな」
そう言う男の顔面にもいくつか穴が空いていて、後ろの金網、その後ろの東京タワーがすけて見えるが、刻々と穴が縮み、再生していく。
少女は、男が動かなくなるまで撃ち続ける。
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