イカれた2人

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「まったく、可愛くないねぇー、お前さんは……」 革ジャンを着込んだ坊主頭の男は髭面を右手の人差し指で掻きながら、そう言って目の前にいる電子双眼鏡を手に風景を眺めているツインテイルの金髪にクラシックなメイド服姿が良く似合う女の子に話しかけていた。 「十兵衛、のんびりしてないで仕事の準備を始めたらどうなの?」 クラシックメイド服姿の女は電子双眼鏡を覗きながら、十兵衛に向かって口を開いていた。そこは、殺風景なビルの最上階。冷たい北風が2人の体温を容赦なく奪い取っていく。 「寒いわ十兵衛、少し身体を暖めよ……」 「暖めてだと!?、なんでコートの一つも持ってこねぇんだ?」 文句を言いながらも十兵衛はメイド服姿の女の子の背後から身体を重ねて暖めてやる。そんな所作に彼女はゆっくりと小さく呟き笑みを浮かべる。 「なんだかんだ言ったって優しいんだから……」 「ん!?、何か言ったかソニア?」 「ええ、岡田ちゃんからの連絡が遅いなぁ~ってね!!」 「まったくだ、岡田の旦那、何してやがる……」 ビルの屋上でボヤく2人と裏腹に地上にいる岡田は息を荒げていた。彼は警視庁、本庁のキャリア組であり本来ならこんな場末の現場にいる身ではないのだが……。 3日前の上司の一言で、この2人の警護を任されていた。部屋に入った瞬間、飛び込んできた容姿に心臓が縮み上がる。 「またー!!、お前らか!!」 岡田の絶望的な叫び声が部屋中に響き渡る。半年前に常識はずれの2人に振り回された記憶がよみがえってきていた。
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