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「いえ、里子さんに頼まれてはいない。自主的に行ったことです。でもだからって、何で僕が殺すんですか?それに田沢さんは自殺した可能性もあるらしいじゃないですか。僕は殺してなんかいませんよ」
青沼は田沢が死んだ時間(死亡推定時刻)の午後2時ごろには、1人で買い物をしていたらしく、アリバイはなかったが、白とも黒とも言えないところであった。
水神は二つの事件に、関連があるのか無いのか、考えあぐねていた。
だがふと、亜久津情児が言った「もっと早く真相を話していたら、田沢さんは殺されずに済んだのに」という言葉を思い出した。
あの時は情児に聞けずじまいだったが、情児はひょっとして、何かすでにわかっているのかもしれない。
そう思って水神は、夕方、再び情児の家を訪ねた。
先に訪れる旨を、電話で知らせておいたので、玄関で情児の母はすんなり家に入れてくれた。
情児は小さな応接室で水神を待っていた。
水神は、すぐに応接室のソファに座ると、単刀直入に情児に切り出した。
「亜久津さん、あなたは、前の事件の真相に気がついているんじゃないですか?それと、あなたのこの間の言い方だと、二つの事件は関係してるということですよね。この間は聞けなかったが、わかってることがあったら話してくださいよ」
情児は、あの時、もっと早く真相を刑事さんに話していたら…と言っていた。
その真相を水神は聞きたかったのだ。
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