「ひきこもりグローバリズム」

2.帰国

あ、あの、ずっと部屋にひきこもってるから外出しないんで、イタリアの名所や観光地なんか何も知らんし、見たこともないです。

「犯人は誰ですかね？ヒントだけでも」

事件が起こったことも知らんのにわかるかよ。

いやいや、マスコミの人たちも仕事だからいろいろ聞いてきて記事にしなくちゃいかんのはわかるけど、質問が無茶苦茶すぎるだろ、いくらなんでも。

「世界を股にかけて活躍されている亜久津名探偵のグローバルな推理には日本の警察もかなり期待してるみたいですけどいかがですか？」

グローバルな推理ってなんだ。

「すいません、犯人の名前のイニシャルだけでも教えてもらえませんか？」

だから知らんつーの。

「日本の学校へはいつから通われるんですか？」

ギク！嫌な質問だ。

「それはまだ未定ですが、この近くの学校に通うことになるでしょう」

助かった。
父がうまいことまとめてくれたよ…と情児は心中で父に感謝しながら、ひたすら質問には無言のまま、新しく住むマンションに逃げ込んだ。

この近くの学校ねぇ…まぁ入学はするだろうけど、どうせ行けないだろうなぁ…
そんな気がするよ。

イタリアでも、アメリカでも、フランスでも、韓国でもそうだったし。

学校は3日ぐらい通うと、もう自分の部屋から出たくなくなるしな…
と情児はため息をついた。