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5.証拠
「川上のバッグのポケットから、青酸カリの一部が付着したピルケースが発見されましたが、このポケットは、ピルケースにはジャストサイズの、鞄の横に付いている小さなポケットです。まあ取り出すには、わりと便利なところに入っていたわけですね。ジッパーなどを開け閉めする必要もなく、ソフトなプラスティック製の蓋が付いているだけのポケットですからね」
水神の部下である山吹刑事は、水神にそう報告した。
刑事部屋の窓の外は、中々の快晴である。
まだ若い、スリムな体型で、あっさりした顔立ちの山吹は、いかにも従順そうな表情で、水神と向かい合っていた。
顔には、窓から日が差している。
山吹より背が高い水神は、山吹を少し見下ろしながら、話を聞いていた。
「その上、川上の職場のデスクの引き出しからは、遺書が発見されました。具体的な内容があまり書かれたものではありませんでしたが、いわゆる世の中に絶望してってやつでしょうかね。金にも困っていたみたいですが」
「さっき遺書を見せてもらったが、内容的にはまあそんなところかな。借金も色々あったらしいし、まあ金に困ってたって線が濃厚だな。遺書は自分のパソコンで書いたものだろう」
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