前置き 三

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しかしバカもこれに極まれり。 (何か怪我すればいいや) と、思ったら骨折である。 母親には転んだと嘘をついた。 しかし医者は騙せなかったようだ。 いや、分からないけど。 「本当に転んだの?」 と、何度も訊かれたが、わたしは転んだと貫き通した。 見事である! しかしそれと引き換えに、かなり面倒くさい一ヶ月~二ヶ月を過ごさせられた。 自分でやっておいて過ごさせられたも何もあるまいに。 右手だけの生活の苦労を知った夏だった。 いや、秋だったかもしれない。
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