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告白を聞いて複雑な心境にはなるものの、それでも田村はいい奴で、サトルは目の前の友人を失いたくなかった。  生活の中からこの存在が消えてしまうのは寂し過ぎた。  かといって、セクシャルな問題を棚上げにすることもできない。  サトルは生まれてこの方自分はノーマルだと思っていたし、実際、高校時代は女の子と付き合っていた。  女の子を好きになるように、目の前の男を好きになればいい、と割り切れるものでもない。  男同士なんてあくまで想像の域で、よくわからない。思い返せば田村とは、手を握り合うようなことも、抱き合うようなこともなかった。  友達と恋人との曖昧な線引きを今さらながら考える。  相手のことを好きで、信頼していて、あと何がプラスされれば田村の言う『好き』に変化するのか。 泣きそうに見える田村にサトルは訊いた。 「あのさ、男同士ってよくわかんないんだけど、俺ってどっちの立場になるんだ?」  うつむき加減だった田村が、しっかりと顔を上げサトルを見つめた。 「やっぱ、俺が女の役になるの? それとも俺がお前を女の子抱くみたいにするわけ?」  体系から判断すると、田村が男でサトルが女の担当に見える。  質問の真意がつかめずに、田村が動揺しているのがサトルにも伝わった。 「……それは、その、俺がサトルを抱くっていうか……」  どう表現していいのかわからずに、発せられる言葉はたどたどしい。 「そっか……」とため息を吐き出してサトルは立ち上がり、これですべてが終わるのだと観念している様子の田村に歩み寄ると、膝の上で握られた彼の拳に触れた。  決意と呼べるほどのものでもなく、大事な友達の意向をとりあえずは受け入れてみようかと、サトルはあくまで暫定的な対応を取ることにした。  田村のことはとても信頼している。  なので、ダメならダメで、レイプみたいなことにはならないだろう。 「とりあえず、やってみよう」  ……とりあえず、やる……って何を? と田村は目で尋ねる。
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