夢見る心臓

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織田 達也(19)   高1までスプリンター。将来はオリンピックを目指していたが、心臓に重い疾患を抱  え、移植が必要と言われる。 桜井 千春(18)   女子高生、夢はマラソン選手だったが、骨肉腫で足を切断する事に。その矢先交通事  故で死亡し、心臓は達也に移植。 【プロット】  目覚めるとそこは病院の屋外階段の踊り場だった。死のうとして心臓発作を起こし気を失っていたらしい。  織田達也は高1まで、陸上百メートルの選手だった。 しかし突然心臓に欠陥を来たし、移植するしか助かる見込みは無いと医者に宣言された。 達也の血液型はAB型RHマイナスで、死刑宣告されたも同然だった。 そして、その時から達也は死を待つだけの虚しい3年の月日を経た。  そんなある日、幸運な事に突然達也の元へ臓器提供者が現れ、手術は大成功。 いや、それどころか術前より走る事に関しては人並み以上の実力を発揮していった。  しかし何かがおかしい。  嗜好品や癖等が前の自分とは違う。まるで別人そして驚くべき事が!  何と心臓が勝手に喋りだしたのだ、若い女性の声で。 「私は千春。18歳の高校3年。実は貴方の心臓はね、私の心臓なのよ」と言う。最初は気が狂いそうな衝撃に戸惑った達也だったが、日に日に千春のせつない思いに惹かれて行く。  実はこの千春、生前は実力のあるマラソンランナーだった。母親が走る楽しさを千春に教え、いつしか生き甲斐になったのである。しかし骨肉腫で足を切断する事になり、生きる希望を失う。走る楽しさを教えた母親のせいだと罵り、家を飛び出したその時、交通事故で命を落としたのだ。  母親は絶望と責任から自殺未遂をした。  母のせいでは無いと謝りたい一心で千春は卓也に呼びかけたのだ。  そして、千春には叶えたい夢があった。それはフルマラソンで入賞する事。亡き父親との約束でもあり、母への恩返しでもある。それを果たさなければ成仏できないと千春は言う。  達也はそんな千春の夢の為にマラソンを始める。そして事情を告げ、千春の母親をマラソン大会に招いた。それは心臓をくれた千春へのお礼だけではない。新しい人生を得た達也の、未来への希望でもあったのだ 「千春、必ず入賞してやるからな」 しかし千春は「ありがとう」の言葉を最期に達也の体の一部になり、もう語りかける事もなかった。 達也は悲しみを堪え、ただひたすら風になってゴールを目指した。
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