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After story ―後編*―
ベッドにもつれるようにして倒れ込んだ。その間もひとときも離れたくなくて唇を押し付ける。舌先をねじこみ、歯列をなぞっていく。
「んっ……はぁっ――」
角度を変える度に甘い声が漏れる。その呼吸にすら食らいつくように舌に吸いつく。俺はなぜだか焦っていた。シャツのボタンを一気に外して胸の突起を押しつぶす。
「あっ」
喉元に唇を滑らせると、そこが細かく震えた。見えない印を焼きつけるように口づけを落としていく。すっかり勃ちあがった尖りを口に含むと、声も身体も小さく跳ね上がる。
「ああっ――」
「やっぱりここが好きなんだ」
「んんっ――ちが……うっ」
「こんなに……硬くしているのに?」
押さえつけている身体がびくびくと動いて、明らかに硬くなったそこが俺の身体に擦りつけられていた。
「樹さんは嘘をつけないね」
俺の言葉に突然身体が強張った。彼の目は俺を――いや、俺を通り越して遥か遠くを凝視している。それは螺旋階段に佇むあの表情にどこか似ていて、一瞬にして彼を奪われたように感じた。でも、この人はもう――俺のものだ。
引きつった頬を包み込む。黒い瞳を覗きこみながら、俺はじっと待ち続けた。次第に焦点が近づく。そして何の予兆もなく、一筋の涙が目の端から零れ落ちる。
「東、俺……」震える声は再びどこか遠くへと放たれる。
「俺は、だめだ。俺は――」
「樹さん」
少し強めに彼の名を呼ぶ。俺の元へ引き戻すために。俺がここにいると、わかってもらうために。
「あなたに何があって……誰のことを考えているのか知らない。忘れてほしいとは言わない。でも今はもう――俺だけを見て」
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