愛のしるし

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うれし泣きでグチャグチャになった若菜が 私に手を振り田中さんに連れられて歩いていった 目の前の幸せが 自分と重なる こんな日がくるなんて 思ってもいなかった 航と再会するまで 自分の人生はもう終わったと思っていた 10年前のあの日から 私には青春といえる日々はこなかったけれども 淡い春が今、訪れようとしている 遅いけれど ほのかに温かい そんな春が待っている 森の中のチャペルの空気が そよそよと吹く風が 頑張って生きてきた自分を褒め称えてくれているような そんな気がした 「凜」 風に浸っている私を彼が優しく呼ぶ 「ん?」 彼を見ると、若菜たちを見て真剣な顔をしていた 「俺が絶対幸せにしてやるから」 ・・・・・・・・・ 「な、何、急に。」 急に歯の浮くような台詞を言う航を驚いてみていると 彼は真っ直ぐ若菜たちを見つめながら 「ずっと、俺の傍にいろよ」 私の手は航の大きい手にしっかりと握られていた じんわりと伝わる航の温もりが 目の奥にも集まって 視界が歪む 「はい・・・・・・・、ずっと 傍にいさせて下さい」 こんなに温かい愛をくれるのならば 何度でも誓う 私はずっと、あなたの傍にいます [ END ]
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