俺、ウサギ。丸いゲージの中

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入職前研修での藤田さんに手ごたえはあった。確かに転職回数は多いと思ったが気の良さそうな笑顔の藤田さんに、それでも俺は念を押した。相性が良ければ今後も継続して契約更新できるからと展望も伝えたし、もちろんアサダ清掃の場所も丁寧に確認した。 「チッ。遅えよ。」 たまに出くわすんだが、これ、すっぽかされるパターンだろ。オフィスの松本にすぐ電話しないと。 「松本?アサダ清掃に配属の藤田さん、」 「今日からの?」 「そう。まだ現地に来てねえの。悪いけど寝坊してないかすぐ確認とって。俺はアサダの所長に先に挨拶してくる。」 「わかった。」 松本は口数が少ない分、仕事は早い。 だが電話の結果は既にみえていた。松本の返事を待つまでもない。入職当日に遅刻する人間が、たとえ今すぐ駆けつけたとしても企業の印象は最悪だ。それでもどうしてもここでこの会社で働かせてほしいと詫びを入れる熱意があるくらいなら、…初めっからラピッドなんか頼ってねえって。 松本からはすぐに電話が返ってきた。 「宮地くん。藤田さん、やっぱり辞めますって。課長にも今報告した。課長が土下座して来いって言ってる。」 「あー…わかった。今土下座してくる。」 「…しなくていいわよ。」 どっちだよ。     
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