俺、ウサギ。丸いゲージの中

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「月末の土曜日だ。」 「いいですね。人が沢山来ると思います。」 「会社の名前、ラピッドの意味知ってるか?」 「rapid。速いすばやい迅速な。 人材がほしい会社と仕事を探す人、双方を迅速に結ぶのが僕ら派遣のラピッドです。」 「なんだ、覚えてたのか。それで良くお客様に勘違いされるのが?」 「ウサギのラビットですね。rabbit。実際何回も企業さんに説明しました。」 「そこで今回はその間違いを逆手に取る。」 「お。なんと逆転の発想ですね?」 見よ、この押田課長とのキャッチボール。飛び交う音声がなんともご機嫌じゃないか。 「今日から派遣のラピッドはマスコットキャラクターとしてウサギを採用する。」 「いいですねー。賛成です。説明もしやすい。」 「HPも名刺も社員章のデザインもこの際全部ウサギちゃんに作り直すことで決定した。取締役はウサギ柄のネクタイを見つけたと上機嫌だよ。」 「そうですか。僕も探してみます、ウサギグッズ。」 奇跡だ。こうしてたくさんの言葉が噛み合って弾む会話なんてさ、人間らしい営みだと思う。俺だってその気になれば、何も加奈子に手伝ってもらうまでもなかった。 「ところで宮地、ウサギは好きか?」 「はい。え?課長も?」     
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