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視界が狭いので、ぐるぐる徘徊するしかないウサギ。足がもたついて、そこにいた若い女の子に不覚にも抱きついてしまって、
「キャーッ」
よ、喜んでるのか?よく分からないが、俺の半径5mは無人のようだ。
「いや、なんで逃げるの?ほら、風船。」
「風船なんて要らないから!キャー!」
俺がヨタヨタ移動すると、スポットライトの追っかけみたいに無人の丸いエリアも移動する。要は一定の距離を保って誰も近づいて来ないってこと。ねえ喜んでくれてる?このイベントは、地域の皆さまに向けた知名度とイメージアップの為なんだ。風船を渡さないわけには…
「受け取ってください!働くことの素晴らしさを僕は地球平和のために訴えたい!」
「キャー!助けてー!追ってこないで!」
えー、逃げてくなよー。孤独にするなよー。ウサギは寂しくなると死んじゃうって言うだろ?
「キャー!このウサギ怖い怖い!」
どうして怖いの?草食だよー…
でも限界、もうダメだ。ばたん。
俺、死んだ…。
「何やってんの!」
倒れてウサギの生首がもげて露わになった俺の元に、女神降臨。ペットボトルの水がドンと置かれた。…やっぱ助けてくれるのはお前だ。
「加奈子…」
「もう!脱水になりかけじゃないの!」
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