俺、ウサギ。丸いゲージの中

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視界から出て行く加奈子を目で追う気力もない。お前怒ってるのか?そんな丸いケツを強調するパンツ履きやがって、どこへ… 息絶えたウサギの背後から子どもたちは次々と風船だけ奪って逃げている。 冷や汗を拭きながらペットボトルの水を飲んでいると、ビデオカメラのファインダー越しに課長がにこにこと戻ってきた。 「駐車場エリアでビンゴ大会やっててさ、お前以外全員で加勢に行ってんだ。それにしても宮地。でかしたぞ。シュールでインスタ映えする映像だ。ぜひテレビCMに使おう。褒美に今夜はウサギちゃんの店に連れていってやるからな。」 へえ、そうか。それはよかったですね。でかした俺は力尽きた。着ぐるみから脱皮しても意識朦朧、みんなが撤収作業中もゴロゴロして使い物にならなかった。 「あれ?加奈子は?」 ふと思い出したんだが、女神みたいに登場した加奈子はどこへ。やがて課長に引き摺られ夜の店に入ったけれども、酒を飲まない俺はクルミをポリポリかじりながらバニーに扮した課長のセクシーダンスを眺めるだけで。 「どうした宮地~早く着替えて踊っちゃいな~」 相変わらず一本調子のボーカロイドのくせして、妖艶にはっちゃける絵面とのギャップをどうしたって埋められない自分が残念で、返事をする代わりにウサ耳のカチューシャを頭に乗せた。 前後ろが反対?それがどうした。
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