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社員弁当を届けるので力も使うが、仕事上がりにはスタッフに安価でその弁当が支給される。俺も食ったことあるが、まあまあ旨い。だからスタッフ同士で弁当食って疲れをねぎらい他愛なくおしゃべりを楽しんで帰宅するという、井戸端好きな主婦層に好評な職場。人好きのしそうな川井さんもきっとすぐに馴染めるだろう。
受け取ったばかりの契約書や、保険加入手続きに必要な書類を一式揃えてデスクの松本に渡す。
「お疲れ。あれ?この人、マイナンバーは?」
「忘れたって。明日持ってくるってさ。二度手間だよなー。そのうち生まれた瞬間に体内チップ埋め込まれたら、そんな手間も要らないんだろうけど。」
「早くそうなってほしいわ。」
松本の意外なリアクション。お前ダークホラーファンタジーキャラなのか?と聞いてみたいが、澄ました鉄仮面の手は書類の処理にせわしない。まあいいんだ、こっちはそろそろ、
「俺も今日は定時で上がるかなあ。」
大きく伸びをして声に出してみた。ちらりと顔色を見たが、もう反応は返ってきそうにない。
元々松本に気兼ねして残業する気もなく、机の上に残る資料やメモをまとめ、明日明日、とバッグを抱えたところでだ。来た来た。
「宮地さーん、私ついに先輩になったんですー。」
「へえ。よかったね、小仲さん。またさらにがんばってお仕事してください。じゃ。」
今夜の小仲は俺を解放しなかった。待て、そんなダークホラーな展開いやだ。
「詳しく聞きたくないですかー?だってついに、新人が入ってきたんですよー。」
「そうなんですかー。」
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