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高速タップで文字を打っていると、途中で社用携帯の着信音が鳴った。先に済ませておこう。
「おはようございます。派遣のラピッド、宮地です。」
「宮地さーん、聞いてくださーい。」
番号を見た時点で主は分かっていた。派遣登録スタッフの小仲いつみだ。まただよ。ほっとけば24時間相談の電話をかけてくる。お悩み相談テレフォンじゃないっつーの。だから一応話は聞くが、会話を続けないスキルも必要。
「小仲さん、ショートメールでも僕はちゃんと読んで返事しますよ?」
「私、電話じゃないとダメなんです。」
「そうですか。今日は確かお仕事の日ですよね。」
「実は困ったことがあってー。」
「どうしたんですか。」
「け…怪我しちゃったんです!」
「え?」
「彼氏が。」
朝一番のショートコントにあっけにとられていると、課長が椅子を跳ね除け立ち上がった。
「宮地!三日月屋からの未収金と、んな寝ぼけたスタッフの時給、デカイ金が動くのはどっちだっ!」
ん?金額のデカイのは三日月屋。だがどっちもどっちだ。課長の声も小仲の声も俺の耳には同じに聞こえる。別に優先順位をつける義理はないと思うんだが、俺は派遣スタッフ小仲の話には緊急性がないと判断した。
「小仲さん、彼氏大変だったね。今日もお仕事頑張ってください。じゃ。」
ピッ。
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