8話 歌手になるまで

3/11
1596人が本棚に入れています
本棚に追加
/305ページ
着いたビル、めちゃくちゃデカイ。圧倒された。 私、こんな立派な事務所から歌手になるの?なれるのかな? ……いや、龍一との夢だ!なるんだ。 「なに鼻息荒くしてるの?行くよー」 「うっす!」 受付、龍一が一緒だからスルー。受付の女の人が頭下げて「おはようございます」って、龍一に挨拶した。 あわわわ……私、雰囲気に飲まれながら龍一の後に着いて歩いてた。 エレベーターに乗って、なんだか広いフロアで降りた。 「凜、こっち」 「あ、うん」 龍一がノックして入った部屋、なんだか皮張りのソファーがあって、いかにも重役の部屋って感じ。 奥に入ると偉そうな人が偉そうな机に座っていた。 「やあ!白石くん、……その子が言ってた子かね?」 「そうです。俺の彼女で『中谷凜』っていいます。今、17才」 その偉そうな人、立ち上がって私の前に来た。 で、上から下までジロジロ……ぐるりと回ってジロジロ。 き、緊張するんだけど! 「………外見的には問題ないね。歌は山内さんから私も聞いてる。すぐにでも大丈夫だと言っていた。で、どうしたい?」 「俺の歌で最初から飛ばすつもりです。俺がバックでギターやります」 「なら『白石龍一の彼女』ってのは最初から売り文句にするのか?」 「それは吉と出るか凶と出るかわからないけど、後々を考えたら最初から『彼女』は秘密にはしない方向でお願いしたいんだけど……無理ですかね?」 「いや、秘密にはしないで探ってみたら『彼女だった』にしよう。興味が沸いたら探るだろうし、その方が客も関心を抱くだろうから」 「………感謝します」 「早速だが、会議室に行ってくれ。全曲が白石龍一の曲っていうだけで売り出しやすいからな!よし!思いきり最初から売り出そう!」 「ありがとうございます!一緒に頑張ってみます!」 ………話、私、1言も発っせなかった。 もうガチガチに緊張してた。
/305ページ

最初のコメントを投稿しよう!