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「あれー!? あれあれ? また、きみー?」
甲高い子供の声に、ハッと顔を上げるとまた数字の羅列が並ぶ空間が広がっていた。
「今日、二回目だよー? どんだけアンラッキーなの、マヤっちは!」
きゃはは! っと愉しそうにナビが笑う。
「さてはてー? 今回のは……えっ、職員室に呼び出されたぁ? 小さな不幸だねー。つまんない」
ボソッとつぶやく声は、小さいながらもはっきりと聞こえた。
急に、やる気がなくなったのかテンションが急降下していくのが目に見えてわかった。心なしか、頭に生えているアホ毛がしょぼんと落ちているようにみえた。
ナビは、亀のごとくゆっくりと手を挙げる。先ほどよりも低く、やる気のなさそうな声色で言う。
「それでは~、げーむーはじまるよ~」
『おい、最初の勢いはどうした!』
堪らずツッコミをいれながらも、あの白い光から目を守るため手で目をおおい隠す…………が、一向に来る気配がない。
「はぁ!? なにそれー! また不戦勝?」
ナビのブーイングに目を開けるとまたあの不思議な文字が浮かんでいた。
《相手がスマホの電池切れにより、死亡。このゲーム、山都真矢の勝利》
『電池切れで、死亡!?』
「あーもー、なにこれ、2回連続で不戦勝? 君、アンラッキーなのかラッキーなのかどっちなの!?」
つまんない、つまんない、つまんなーーーい!! と駄々をこねる子供のように床で転げ回る。
「次は、ないからね!」
ダンッ、ダンッ、と2回ほどナビが、床を蹴ると俺は真っ逆さまに下へと落ちていった。
「山都!」
「は、はい」
「お前、余所見なんかして先生の話は聞いてたのか?」
「聞いてました、最近この学校で行方不明の生徒が出ているから気をつけるように……ですよね」
「お、おう。聞いてたならいいんだ……山都も気をつけろよ」
「はい」
職員室に行かなくて良くなったことにホッと胸を撫で下ろした。
机の影に隠しながらスマホを確認する。真っ黒なアイコンは1から2へと変わっていた。
スマホの電池切れにより、死亡。
それと、『----』のアプリアイコンに書かれた“2"という数字。
「……わけがわからない」
小さく呟いた言葉は、誰にも拾われず。空気中に溶けて、消えた。
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