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代わりに、電子文字が浮かび上がる。
《ポイントを使用し、ゲームを辞退したため。このゲーム、山都真矢の勝利》
「えええ、不戦勝!? なにそれー、つまんなーーーい!」
頬を膨らませ、片腕を上下に振り回しブーイングをするナビ。何が起こったのか、訳がわからなくて放心する俺。
「むむむぅ、とりあえず、不戦勝だけど初勝利おめでとうございますぅーー!」
『あ、ありがとう、ございます?』
戸惑いながらもそう返すが、よくわからず。もう一度文字を読もうとしたが、どういう原理か、文字は砂のように落ちて消えていく。
「時間みたいなのでー、今日は諦めますけどーー。次回こそは、ゲームしてもらいますからねー。覚悟しててよー!」
そう言うとナビは床をダンッ、ダンッと二回足で叩き、鈍い音を響かせる。
あまりの悔しさに地団駄でも踏んだのだろうか?
そう思った、その時、ドンッと強い衝撃が俺の体を襲った。
重力に従って後ろに、ゆっくりと倒れていく体。後ろには、黒く大きな穴。押したであろう人物が、にこやかな笑顔で両手を振っている。
あぁ……。
落ちていく。
「命の次に大切なスマホ。取り扱いには、注意デスよ☆」
視界が真っ黒に染まっていくなか、ナビのかん高い声が聞こえた。
キキキキキキキーーーーッ!!!
ブレーキ音、目の前に迫る大型トラック。
「わぁ!?」
「あぶねぇな! 余所見してんな!」
運転手の怒号が響いた。
どうやら俺は、突っ込んできたトラックを間一髪で、後ろに避けられたらしい。
「お兄さん、大丈夫かい?」
スーツを着た、サラリーマン風の男が手を差し伸べてくれる。その手を取って起き上がれば、一気にドッと冷や汗が流れた。
もう少しで自分は、死ぬところだった。そう考えると急に怖くなったのだ。
自分は、タスカッタ。
「ん?」
ふと手元のスマホを見ると真っ黒だったアイコンが、微かに変化しているのに気がついた。
「……1?」
意味のわからない数字に首を傾げながらも、考えることを放棄した俺は、その横断歩道は使わず別の道から学校へと向かった。
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