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「あぁ、今日も美伽ちゃんは美しかった」
「はい、はい」
授業が終わり、帰りのHRの時間。先生が淡々とどうでもいいような事柄を話していくなかで、隣に座る羽山亮平が頬杖をつきながら呟いた。
彼の目線の先にいるのは、学校のマドンナと言われる神谷美伽だ。
生き残りゲーム、それに現れた神谷美伽はあの場から消えたもののなにごともなかったかのように学校に来ていた。
彼女は、この教室の廊下側、一番前の席に座っている。
まるで、あの時のことは知らないかのように、澄ました顔で静かに先生の話を聞いていた。
もしかして夢だったのだろうか。彼女を見つめながら、そんなことを考える。
すると、彼女は俺の視線に気がついたのか振り向き、ニコリと口角が微かに上げて微笑んで見せた。
彼女の微笑みに目を奪われる。
「山都!」
「うぇ!? は、はい」
「なに余所見している。先生の話、ちゃんと聞いていたか? 帰りに職員室に来なさい」
クラス中が笑いで溢れた。「なにやってんだよー!」
「なに見てたんだ、おまえー」などの言葉が飛んできては、俺の背中にグサグサと刺さる。
この先生に呼び出されたら最後、朝礼での校長の話よりも長い説教が待っている。
あぁ、ツイていない。
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