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「私の右手には赤外線センサーが搭載されていますからね。病気になってしまったマスターの体温を測定するための機能ですが、異常な数値を検知したので驚きましたよ」
そう付け足しても、腑に落ちないことがあるようで、「うーん」と声を漏らしていました。
「まあ、事情はわかったよ。僕をマスターだと認めないのは、僕が人間ではないから。ロボットがロボットに仕えるなんて世も末だってことだね」
「その通りです」
「僕に言わせてみれば、世の末はもっと遠いところにあると思うけれど、君の気持ちがわからないわけじゃない」
「ロボットなのに他機の気持ちがわかるんですか?」
「……君だってロボットじゃないのかよ」
「私は史上初の『心』を持ったロボットなんです! あなたとは違います!」
私がそう言ったあと、ポンさんは言葉を発さなくなりました。少し言いすぎてしまったかもしれません。そう思い、彼の表情をうかがったのですが、彼は微笑んでいるように見えました。
「もしかして、マゾヒストとかっていうやつですか……?」
「ロボットに特殊性癖があるわけないだろ。ただ、面白くないことだけど、僕と君は確かに違うなって思っただけだよ」
そう言って彼はさらに笑いました。何が彼をそこまで笑わせるのかまでは、私には理解することができませんでした。
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