1人が本棚に入れています
本棚に追加
「それにしても、ポンさんもこの番組好きだったのね。私も好き」
田口さんはテレビを指差した。こんな番組を見るのは初めてだし、好意的な印象なんて欠片もないけど、「へぇ、そうなんだ」と相槌を打った。
『絶体絶命の危機が襲来! CMの後、彼の生死はいかに――!?』
「ああっ! いつも良いところでCMに行くんだから……」
テレビのナレーションを聞いて、彼女が身もだえた。「身もだえなくとも、死んだら放映できないから生きてるだろ」と思ってしまった。
「今週は生き残れるのかしらね……」
「え? 先週は死んだの?」
この番組に少しだけ興味を持ってしまった瞬間だった。
『家政婦からお友達まで、あなたの為なら何にだってなれる! あなたの為のロボット、「マイロボ」がお手頃価格で登場! 詳細はウェブで!』
番組への興味が冷めやまないうちに飛び込んできた宣伝は、こんなうたい文句で人々の購買欲を掻き立てる。まあ、本当に掻き立てられるのかは知らないけどね。
「ロボットも安くなったもんだね」
「技術が進歩すれば、良いものも安価につくれるようになるものよ」
「とうとうロボットに職を奪われちゃうんじゃないの? 面白くないね」
「私は働きたくないからいいけど」
「奇遇だね。僕だって働きたくない」
僕はマイロボのウェブページを開き、スペック表を眺めた。様々な機能、性能が示されていたけど、一番目を引いたのはこれだ。「類を見ないほど人間味を帯びたAIを搭載」。
「人間と区別がつかないって評判らしいわよ」
「いつか読んだSF小説みたいだ」
「時代がSFに追いついちゃったってことね。これからのSFはいったいどうなるのかしら」
僕は、「さあね」と言って首を横に振った。
スペック表を続けて読んでみると、保証耐用年数は10年と書いてあった。これは極めて長い年数だ。さらに、今後100年の有償サポートが確約されているという。
「これがいいかな」
僕が田口さんに向かってそう言うと、彼女は少し考えたそぶりを見せたが、結局答えは出なかったようで、「え、何の話?」ときいてきた。
「今年の誕生日プレゼントだよ。だめかな」
こうして僕の誕生日プレゼントは、マイロボに決まった。
最初のコメントを投稿しよう!