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そんな会話を済ませた後、私たちは田口さんに案内されてエレベーターに乗りました。マスターは六階にある一室で私のことを待っているとのことでした。
エレベーターの中で、私は田口さんに尋ねてみます。
「マスターってどんな方ですか?」
「一言でいえば、捻くれ者ね」
博士も「うむ」と大きく頷きました。博士とマスターはお友達ではないと言っていましたが、やはり知人ではあるようで、さらに言えばマスターが「捻くれ者」であるというのは、お二人の共通認識であるようです。
私は「うう……」と声を漏らしてしまいました。六階に近づくにつれ、不安が大きくなっていくのがわかりました。
「でも、根は優しい子だから心配しなくても大丈夫よ。慣れるまでは時間がかかるかもしれないけどね」
エレベーターの扉が開き、私たち三人は一つの部屋の前まで到着しました。
「ここよ」
田口さんがつぶやきました。どうやらここがマスターの部屋のようです。博士に耳打ちしました。
「心の準備はいいかい?」
面白いことに、先ほどまでの不安はどこかに消えてしまっていました。いえ、本当は不安が大きくなりすぎて、それを不安と認識できないほどになってしまっただけなのかもしれません。ただ私は、前に進もうと決意したのです。
「バッチリです!」
私が博士にそう言うと、田口さんは扉を三回叩き、それを開きました。
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