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「ポンさん、例の子を連れてきたわよ」
部屋に入ると、ベッドの上に横たわる十五歳くらいの少年の姿がありました。少年の左腕にはガーゼが貼ってあり、そこから太いチューブが飛び出していることがわかります。
部屋にはテレビ、テレビ台、ベッドと、大きなコンピューターのような機器が一台あるだけで、それ以外のものは見当たりませんでした。少年の腕から延びるチューブは、ベッドの下を通ってコンピューターのような機器につながっているように見えます。この機器は栄養剤供給機のようなものなのかもしれません。
「初めまして! マイロボのマイです! これからよろしくお願いします!」
私がそう言って深くお辞儀をすると、マスターは冷たい声を出しました。
「これはあんたの差し金か?」
シミュレーションで経験したどれとも違う発言が飛び出し、面を食らってしまいます。これが実地の洗礼というものでしょうか。顔をあげると、どうやら先ほどの言葉が私に向けられたものではないことがわかりました。
マスターの目が睨んだ先が私ではなく、博士に向けられていたのです。
「差し金って、人聞きの悪いことを言わないでほしいね。テレビコマーシャルを見て、マイロボが欲しいという『意思』を持ち、購入したのは君自身なのだから。まあ正確に言えば、『テレビコマーシャル』というよりも、君にあてた『ビデオコマーシャル』というべきかもしれないが」
「ということは、田口さんもグルだったってことか」
「何のことかしら?」
田口さんは本当に何のことかわからないといった様子で首を傾げました。なんの話をしているのかわからないのは、もちろん私も同じでした。私たちは、二人の会話に置いてきぼりになってしまいました。
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