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盗賊ギルドはまず最初に入念に調査を行う。
その村に所属している人物。
中でも特に注意すべき人物等ーー
名も無き村ゆえにこういったことには無頓着なため、調査だと分からずに素直に答えてしまう人が多い。
ニホノギなんてまさにそれである。
だが、盗賊をして長い者はニホノギに話しかけては行かない。
なぜならば、あからさますぎるため、捜索をされた際に足が着く可能性が有るからだ。
ならば、そうならないために標的となる人物ーー
それは、複数の心の弱い人物だった。
まさに今、この名も無き村では先の巨大なネズミの件で傷心の真っ只中に居る人物が多数存在している。
故に、足がつきにくく、そういった心の弱っている人間には付け入る隙が存在する。
だからこそ、イズルハは日中はミカゲの家の前で語りかけ励ます良い幼なじみを演じ続けていた。
イズルハがヤエとミカゲに語りかける事で調査に来ている盗賊への予防となる。
夜間まではさすがに居られなくなるが、夜間にわざわざ訪れるという行為は変に目を引いてしまうだろう。
それはそれとして、同じ盗賊として生きたイズルハは盗賊を見分けることが出来るかどうかと聞かれれば……。
そう言われれば、イエスと答えられるが、齢六歳の体では出来る抵抗は真っ向から戦うことではない。
野獣から抜き取った能力も、この時代にはまだ異質なものだ。
前世で王宮学者であったステファン教授がこの事を発見した事を思い出す。
ステファン教授が世に広めるまでは知れ渡る訳にもいかない。
公となる事は即ち、能力の剥奪と研究の糧と称する自由への冒涜となるだろう。
自分には守りたいものがある。
それを長らく続けていたからこそ、こうして訴えかけながらーー
ーーこちらの様子を伺い見ている三人の人物を特定する事が出来た。
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