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様子を伺っているのは、一人は自警団のニホノギ。
彼は素直な性格で、一喜一憂が顔に出やすい。
今も見廻りの仕事の最中だというのに気の毒そうにイズルハとその先のミカゲの家を見つめていた。
だが、見廻りの仕事に支障が出てはと、途中で見切りをつけて歩き出す。
もう一人は村長が傭兵として雇っているアスカという女性だ。
彼女はカゲロウ不在の際に一人鍛練を続けていたイズルハに唯一話しかけてきた傭兵だった。
気さくで話しやすく、若干地方特有だという訛りのある喋り方が特徴的だ。
傭兵としての腕は高く、イズルハから見ても勇者パーティーには劣るが、一流冒険者の一人として見て良いだろう。
彼女も傭兵としての仕事を優先し、ニホノギ同様に見切りをつけて戻っていく。
だが、たった一つーー
じっとりとまとわりつくような視線がそれに混ざっていた。
視線の方向は分からない。
だが、確実に一定のリズムで刻む盗賊特有の息を殺した呼吸法の微かな音が聞こえていた。
実力は上の下ーー
簡単に盗賊だとバレてしまう者をジャンクが偵察に出すとは思えない。
とはいえ、あまり実力の高い者はかえって問題が有った。
それは前世で所属していたイズルハだからこそ認識しており、それゆえの評価だった。
本当に実力の高い上の中、上の上の盗賊はーー
そう考えていると夕方となっていた。
しぶしぶ帰ろうとするようにその視線の主へと見せる。
すると、その感じていた視線は消えた。
ようやく気を抜いて呟くことができる。
「俺がこのままミカゲの家に付きっきりだと良くない。
なんとかして解決策を考えないと……。」
他の家で捜査を終えて調査結果を持ち帰ってしまうだろう。
そうさせないためにはーー
「自由に動けるのはーー
ーー夜だけって事になるよな。」
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