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「みなみ!」
私はさとみの、この声が大好きなんです。
暖かい午後の陽射しが差し込む庭の中の、我がプライベートルームでうつらうつらしていると、学校から帰って来たさとみが、門扉の所から一直線に私のもとへと駆け寄って来ました。
「みなみ、お散歩行こう!」
言いながら、ランドセルを縁側に置き、その傍らにあったリードに手を伸ばすと、私の首輪に付けようとします。
おやおや、ずいぶんせっかちさんですね。
またお母さんに怒られますよ。
まずはランドセルを部屋に置いて、手を洗って、おやつを食べて、宿題を片付けて…。
「こらっ!さとみ!あんたはまた!」
案の定、お母さんが庭に面したサッシをガラリと開け、さとみを叱りつけました。
「きちんとやることやってから行きなさい!それに、みなみは今気持ちよさそうにお昼寝してるでしょ!」
「えー。でも、みなみはお散歩大好きだもん。わたしが呼べば喜んで起きるんだよ」
ブツブツと文句を言いながらも、さとみは縁側で靴を脱いで揃えると、ランドセルを手に居間へと入って行きました。
「やるべきこと」をやるのですね。
何だかんだ言って、きちんとお母さんの言うことを聞くんですよね。
おりこうさんですね。
なんて事を考えていると、さとみは振り向いて言いました。
「みなみ!わたし宿題やっちゃうから、ちょっと待っててねっ」
やっぱり宿題があったんですね。
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