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面接室に入った瞬間、瑞華は思わず手にした鞄を足元に落とした。
「失礼します」
「大丈夫ですよ」
散乱した鞄の中身を拾って入れる女子学生に穏やかな若い男の声が届いた。
「今日はお越しいただきありがとう」
まだ青年と言っても差し支えない上等なスーツ姿の男は夢で連れ添ったあの人にそっくりだ。
「私が社長の楊泰麟です」
「私はアートディレクターの董怡です」
こちらは夢で目にした董皇后に生き写しでやや吊り気味の大きなアーモンドアイが特徴的な、しかし、固く真っ直ぐな黒髪は短く切り揃えて長身にパンツスーツを纏っているため美女というより中性的な美青年じみて見える人だ。
「よろしくお願いします」
瑞華は背筋を真っ直ぐ伸ばして頭を下げた。
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