Pride one

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「相手のことどんなに好きでも、ただ好きって言ってるだけじゃ、心を動かせないってこと。一生さんは言葉じゃなくて、一生懸命わたしのために何かしようとしてくれた。それでね、考えたの。 わたし、ゆずのこと好きっていいながら、ゆずの気持ちになって、ゆずのために何かしたことあったのかなって。……今まで自分勝手で、気持ちばっかりいっぱい押し付けてごめんね」  最後にはまた、堪えきれずに声を揺らし、美波は顔をくしゃくしゃにしている。 「いいよ、そんなの。俺だってずっと勝手にしてたし。とにかく泣くなよ、メイクだってダメになるし、俺、こういうときどうしたらいいのかわかんないんだから」  優月はじっと美波の目を見つめる。 「そうだよね、ゆずが気の回る男だったら、あんなに振られてばっかりのわけないもんね」 「お前失礼なやつだよね」 「ねえ、ハンカチ」 「ない」  美波は泣き笑いして、優月にもたれかかった。もう一度背中に腕が回される。それから暫く、美波は口を閉ざしたまま、ただ優月に身体を預けていた。 話したいことも、話さなければいけないことも、きっとたくさんあるはずなのに、そのどれもが美波の覚悟を挫く言葉のように思えてくる。 真っ直ぐ胸に届いた言葉に対して、昔の、そして今この時の感情の微細を上手く伝えられないことがもどかしかった。
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