Pride one

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「結婚おめでとう、美波」  優月は、ようやく心からの言葉を美波に送った。金城は、美波は区切りが欲しいのだと言っていた。だが、心にけじめが必要だったのは、自分も同じだったのかもしれないと、優月は思った。 「ありがとう。……ちなみに、キスしたのは一生さんには絶対に言わないでね」 「ええ? だってもぐら、承認済みだって」 「最後の最後に騙してごめんね、ゆず。でも、本当に嬉かった」  美波の鼻も、目も、耳も泣いたせいで真っ赤になっている。それでも、いつものように悪びれる様子すら一切見せずに、屈託のない笑顔を向けてくる。  また、こいつにやられた。そう思うのだが、怒りよりも可笑しさが込み上げてきて、優月はつい吹き出してしまった。 とんでもない女だ。よくよく考えてみれば、ファーストキスというのもでたらめかもしれなかったが、もう今更どうでもよかった。  誰にも言えない秘密をひとつ共有することになってしまった。しかし、不思議と優月の心は、窓の外にどこまでも広がる青空のように、すっきりと晴れ渡っていた。
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