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「違うっつーの」
自分の中でそこに辿り着くよりも先に、ずばり言われてしまい、優月の耳が熱くなった。テーブルに肘をつき、両耳の上にさり気なく手のひらをあてる。
「人生の特別な思い出の写真がさ、化粧で別人ってちょっとどうなのかなって思っただけ」
「もし普段からしっかりメイクしてる人だったら、そこまで違和感ないかもしれないよな」
坂巻のフォローは相変わらず優しかった。口を尖らせていた優月も同意する。
「あ、そうだ。沖縄来たら絶対に泊まりに来いってさ。美波、ダサい民宿を今風に大改造するんだって意気込んでた。あいつのセンスもちょっとおかしいから、どうなっちゃうのかわかんないけど、あとはもう金城さんに全部お任せしますってかんじ。
金城さん、人生悟ってるの。超いい人なんだよ、ほんとうに。美波相手でもストレス感じてなさそうだった。……あいつ、俺と結婚しなくて良かったよ絶対。心底思う」
「お互いを思う気持ちがあっても、ぶつかり合って神経すり減らしながら暮らすんじゃ、一緒にいる幸せすら感じられなくなるからな」
神長の言うそれは経験から悟ったものなのか、言葉にはずしりと重みがあった。
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