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世の中にはきっと色々な価値観があり、それと同じ数だけ幸せの種類があるのだ。恋愛や結婚においてもっとも大切なことは、そのあたりの合致なのかもしれない。
金城と美波は、それぞれが思い描く幸せの形にぴったりな相手だったのだろう。これから時間を重ねるごとに、想い合える関係になっていく。それが優月には少し羨ましくもあった。
いつか自分にもそんな相手が見つかるのだろうか。過去の恋愛を振り返っても全くそんな気がしなくて、優月はため息を落とした。
「俺って、やっぱわがままなのかなあ」
「そのうち合う相手も見つかるだろ」
小皿の上に生姜を取り分けながら、神長が言う。多くを語らずとも、言わんとすることを当たり前に理解するのがこの男だ。
「僕も、優月くんは今のままでいいような気がするよ」坂巻も同調する。
「美波さんはきっと、優月くんのマイペースなところにやきもきしながらも、そういうところに憧れてたんじゃないかな。みんな、人から縛り付けられなくても、勝手に色々なものに縛られながら生きてしまうだろう?
だから、自分の想いを尊重した生き方が羨ましかったんだと思う。もしかしたら、美波さんが結婚相手に金城さんを選んだのも、優月くんみたいに生きてみたい、って思ったからかもしれないよ」
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