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ようやく涙が引いてきたころ、ふいに少女が空を指差した。
「ほら、見て」
少女の指先を見ると、ぶ厚い灰色の雲の隙間から差し込む、まばゆい一筋の光。まるで希望のような、きらきらとした輝きを放っている。
「天使のはしごって言うの」
「天使のはしご…」
遠い昔に、誰かから聞いた覚えがある。あれは、誰からだったのだろう。
「そう、天使のはしご。あの光は神様やあなたを想う人が、いつもあなたを見守っていますよ、っていう祝福のサイン。見る人すべてを祝福してくれる、しあわせの光。あなたの名前にこめられた意味みたいにね」
そうだ、思いだした。この話を、天使のはしごを私に教えてくれたのは。
「おばあちゃん…!」
少女がいたところには、ただ柔らかな光が差し込むだけだった。最初から誰も、そこにはいなかったかのように。
そうか、今日はおばあちゃんの命日だ。
泣き虫だった私を気にかけて、時に厳しくも、愛に満ちた優しさで、いろんなことを教えてくれたおばあちゃん。
まだまだ泣き虫な私を心配して、会いにきてくれたのだろうか。
「ありがとう、おばあちゃん」
まだもうちょっとだけ、強がっていられそうだよ。
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