こたつの国の、眠り姫

2/2
11人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
「...ただいま。」 彼の声を聞き、私はにんまりと笑った。 ふふふ、今日は完璧なんだから! いつもこたつむりだの何だのと、からかわれるけど。 ちゃんと仕事から帰ってから、夕飯も作ったんだから! 結婚する事になり、私の両親は挨拶に来てくれた彼に言った。 「春と夏と、秋はいいんですよ。 ...けどコイツ、冬になると本当に、家にいる時はずーっとこたつに潜って、寝てばっかりで。 本当になんにも、しませんよ?」 「それはさすがに、言い過ぎだと思いますが...。  でももしそうだとしても、彼女以外と過ごす未来は考えられません!」 彼は答えた。 そして春になり、私と彼は夫婦になった。 私達は共働きなので、掃除は主に彼が、洗濯と食事の用意は私がするのが暗黙の了解と言う感じに落ち着いた。 何事もなく幸福に、夏が過ぎ、秋が過ぎ..そして冬が来た。 大好きなこたつは、普通よりも少しだけ大きな物をおねだりして、買ってもらった。 ちゃんと家事も、するつもりだったのよ? けど...でも...こたつには、魔力があると思うの! こたつはそう、言うなれば私の王国! 最高に幸せな時間を、与えてくれるの。 だから...そう、一度入ると、抜け出せないのよ! 私は大好きなのだ。 大好きな旦那様を、こたつで微睡みながら待つ時間が。 だからこれからも、ずっと一緒にいよう? 春が来て、夏が来て、秋が来て...また冬が来ても。 「...お弁当、買ってきたよ。  一緒に食べよう?」 彼の声が、再び聞こえた気がした。 ...お弁当って、何よ? 今日は私、ちゃんと夕飯も作ったんだからね! ...あれ? 作った...のは現実だったのかな。 そんな事を考えていたら、優しく頭を撫でられた...気がした。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!