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“やばいっ”
そう思うや否や、横たわる男の鳩尾に重い拳が一回、二回と打ち込まれた。
「おぐふぅっ!」
頭を押さえつけられ、脳内への酸素の供給が追いつかない中でのボディへの攻撃は、痛みは勿論のこと、咳き込むことによる酸欠で意識が朦朧とする。
その時、隣の部屋で待機していた筈のサイという女の声がすぐ傍で聞こえた。
「カイ、そこまでよ」
凛としているような、それでいて脳天から発しているようにも聞こえる不思議な甲高い声。
決して心地のいい音色とは言い難いものではあるが、このままでは感情のままに嬲り殺されるところを助けてくれた救いの声は、まさに天使と言っても過言ではない。
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