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「なんやねん。コイツをヤラな……」
「指示は私よ」
頭部にかかっていた力が少し緩んだが、安堵するまでには至らない。
急所にクリーンヒットをかまされ、内臓へのダメージが半端ない。
苦痛に顔を歪め、咽せてえずきが収まらず、溢れる涙でボヤける視界の中、なんとかサイに助けを乞おうと必死に手を伸ばすが、パシンッとその手を弾かれた。
「汚い手で私に触れないでちょうだい」
やけに冷徹な声から、彼女も自分を助けるつもりがないことを悟った。
絶望の淵に立たされた男は、頭から手が離れ、軽くなったにも関わらず、気持ちは却って、焦りと不安で一杯になる。
体を丸め、痛む腹を摩りながら、働かない頭をフル回転して彼らが言う“女”のことを考えた。
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