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夢を見ていた。
懐かしい幼少期の夢を――
***
悔し涙を浮かべる少年の前で、彼と目を合わせるようにしゃがみ込む男性は静かに口を開いた。
「駆けっこに負けたのが、そんなに悔しいのかい?」
穏やかな口調があまりにも優しすぎて、堪えていた雫がポロリと頬を伝う。
少年の意思を確認した男性は、大きな手で彼の頭を撫で、もう片方の手でポケットから小瓶を取り出した。
「君達はまだ完全ではない。これから無限大の可能性を秘めている原石なんだよ」
男性の話は、まだ小学生にも満たない子供にとっては難しい。
意味など分かる筈もない少年は、分かったようなフリをして男性の言葉を反芻した。
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