第一話

6/29
前へ
/95ページ
次へ
 *****  カリッポリッ  カリッポリッ  腰の痛みと、遠くで聞こえる軽快なようで不快な音によって、男は眠りから覚めた。  辺りは真っ暗で何も見えない。  背中に感じる硬さと、掌から伝わる冷たさから、床の上に直接横たわっていることが分かる。  変な姿勢で寝ていたらしく、体全体が強張り、節々が痛む。 「いてて……ここはどこだ?」  目が覚めたばかりで、頭がよく回らない。  とにかく、自分が置かれている状況だけでも把握しようと、床に手をつき、上半身を起こそうとすると、ズキリとした頭の痛みと同時にクラリと眩暈がした。 “俺は昨日、馴染みの店に行き、一人で呑んで、それから――”
/95ページ

最初のコメントを投稿しよう!

114人が本棚に入れています
本棚に追加