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カリッポリッ
カリッポリッ
静かな室内の中で微かに響いたのは、フリスクか飴か――何か硬いものを噛み砕く音。
少しくぐもったような感じがするところから、壁やドア一枚隔てたところで鳴らされているようだ。
その音によって思考を遮られた男は、痛む頭を摩りながらキョロキョロと辺りを見渡すと、一ヶ所だけ、床下から数ミリ上の位置に一直線の光の筋が出来ていた。
“扉は一つか……”
他からは一切明かりが差し込まないところをみると、この部屋は窓一つなく、あのドアが唯一の出入り口と見ていいだろう。
拘束されているわけでもなく、体の自由は利く。
ただし、自分が何故、こんな所に連れて来られたのかが分からない今、下手に動くのはマズいと第六感が警鐘を鳴らす。
ゆっくりと立ち上がり、足音を忍ばせてドアへと近づこうとして気が付いた。
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